先日発表された1月の米雇用統計は市場予想を大幅に上回り、失業率は53年ぶりの低水準となった。FRBが利上げ継続姿勢を貫きながらも、市場はブラフと考えて上昇相場だっただけに、米国労働市場の恐ろしいほどの底堅さは大きなサプライズとなった。
この結果を受けて、労働賃金の上昇が止まらないのではないかというインフレへの懸念が再度高まったことは言うまでもない。
一方で急速な利上げを受けたにも関わらず、異常な低さを見せる失業率を背景に米国はリセッション入りせずに済むかソフトランディングが可能だという見方もまた増えてきた。
当ブログでは、これまで米国の消費者行動に関して、実質賃金の低下(給料から買えるものが少なくなっている)とクレジットカードローンの延滞率の上昇から、米国の消費活動は低下すると紹介してきた。
しかしながら、雇用統計で米国労働市場の強さが再確認できた。私の目論見は外れ、米国の消費活動は一定水準で落ち着いて問題なく推移するのか。
私の結論は今回の雇用統計を受けても変わらない。米国の消費は低下し、リセッション入りまであるように思える。
というのも、労働市場は好調でも、米国の貯蓄は順調に取り崩されているからだ。
米国の個人貯蓄率はコロナ禍における現金給付政策によって、2020年4月には34%に達した。これは過去最高の数値で通常時は7%前後で推移していたから、実に5倍もの貯蓄が出来ていたことになる。
この現金給付がインフレを加速させたわけだが、インフレ禍においては貯蓄を取り崩すことによって、消費活動が保たれてきたわけだ。
それだけ爆増した貯蓄率は現在どうなっているかといえば、ご想像の通り低下しており、最新の2022年12月には3.4%となっている。
貯蓄率は2021年末頃から徐々に低くなり、昨年5月頃からはかなりの低水準で推移してきた。2022年9月には2.4%を記録している。
コロナ禍で蓄えた貯蓄にはまだ余裕があるとの見方もあり、その可能性も確かにある。しかし2021年末にニューヨークタイムズが行った調査ではコロナ前よりも貯蓄が減っている人の割合の方が多く、貯蓄が増えている人は富裕層に偏っているとの結果もある。
参考:https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/03/e8f9d40dd64baa6b.html
貯蓄率が1桁台前半に達してからもうすぐ1年が経とうとしている。賃金上昇はあれど、ローンの延滞増加、貯蓄率低下を見るにやはり米国の消費活動は今後冷え込むと見るのが妥当だろう。
過去記事と参考記事一覧
https://goemon-biz.com/20230123-hukahi/
https://goemon-biz.com/20230201-saihu-bakudan/
https://jp.wsj.com/articles/americans-tap-pandemic-savings-to-cope-with-inflation-11657087306
https://jp.wsj.com/articles/households-burn-through-whats-left-of-their-pandemic-savings-11675716454